MVRDVは、インフラコストを下げ(外周の駐車スペース、舗装材の工夫などによる)、外装のディテールをシンプルにすることで、ひとつひとつがよりコンパクトでバラエティのある連棟住宅を実現している。実際的な制約とクリエイティビティのバランスをとりながら、親しみがありつつ新鮮な建築をつくるというMVRDVの能力が、このプロジェクトにはよく表れている。
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車が通らず、それぞれの建物に庭が付いているハーゲン島は、子どものいる家族にうれしい環境だ。
切妻の建物には色や素材が使い分けられており、集団のなかにもアイデンティティが感じられる。ヨーロッパでも郊外によく見られる、画一的な「小さな箱のような家」に対する建築家側の意見表明とも言えるだろう。
並行に走る砂利道とレンガ敷きの道が歩道網をつくり、そのあいだの区画に、複数の住戸が連なる長方形の建物が互い違いに配置されている。1つ前の写真のように、駐車スペースは全体の外周にまとめられている。
《ハーゲンエイランド》 オランダ、ハーグ 〈MVRDV〉の仕事のうち、もっとも大規模なのが、人口3万人の新興住宅地イペンブルグの一角のためのマスタープラン策定だ。マスタープランは5つの住宅プロジェクトからなり、そのうち3つはMVRDV自身が設計。なかでもハーゲン島は唯一、低価格住宅のみで構成されている。カラフルな切妻のフォルムは、最初にご紹介した《ディドゥン・ヴィレッジ》の先駆けとなるデザインだ。
住人からは、アパートメントの壁が曲線のためインテリアづくりが難しいという声もある。それぞれ工夫してクリエイティブに対応しているようだが、ひろびろとしたバルコニーと美しい眺めを考えれば些細なこと、というのがみんなに共通した意見のようだ。
プロジェクトの目玉は、やはりこのアトリウムだろう。住人にはおなじみの、下から見上げた眺めがこちら。
2つ並んだ穀物サイロのコンクリート壁の規模と強度を生かして、MVRDVは居室を外側に吊り下げる設計を選んだ。こうすることで、コンクリートに開ける開口部は1つのアパートメントにつき1つで済み、サイロの内側にはアトリウムをつくることができた
《ジェミニ・レジデンス》 デンマーク、コペンハーゲン 2005年 こちらもウォーターフロントで、またもや穀物庫の改築プロジェクトだが、場所はコペンハーゲンの古い港湾地域だ。シロダムのキルトのような外観に代わり、サイロのかたちを強調するシンプルですっきりとしたデザインになっている。
住戸タイプは多彩で、2階分の吹き抜けリビングがあるユニットもあれば、小さな中庭付きのユニットもある。一見ランダムな外観とは対照的に、居住空間はひろびろとしており、丁寧に配慮してつくられている。
住戸ユニットを購入する際には、建物に手を加えることを規制するルールへの同意が求められる。たとえば、きちんと色分けされた廊下に個人の所有物を置くことは許されない。寄せ集めのような外観や、住人たちの意向で図書館やジムなどにつくり変えられる余分なスペースが用意されていることを考えると、これは意外なところだ。
ユニークなのは、徒歩でも車でもボートでもアクセスできること(車用のガレージも、ボート用の桟橋も用意されている)。行き止まりで向こうは海というロケーションのため、かなり静かなところも住人に好まれている。
《シロダム》 アムステルダム 2003年 もうひとつ、〈MVRDV〉が大きなインパクトを与えたプロジェクト(写真映えでは《WoZoCo》に負けるが)と言えば、シロダムだろう。アイ河の堤防に建つ古い穀物庫をリノベーションした複合施設プロジェクトだ。このビルには、オフィス、商業施設、住居、そして住居のなかにもさまざまなタイプが含まれており、こういったユニットの種類ごとに変化をつけることでパッチワークキルトのような外観になっている。
ガラスのガードレールは、ファサードにカラフルな光を投げかけるだけではなく、それぞれのアパートメント内にも色を取り込んでくれる。ここに住む人たちは、バラ色眼鏡ならぬ、さまざまな色ガラスをとおして世界を見ることができるのだ。
そのほかの87戸にも、色付きガラスのガードレールで囲まれたバルコニーとして、小さなカンティレバー構造が取り入れられている。
あるカップルは入居待ちリストの13番目だったのだが、前の12組がみんなカンティレバーにちゅうちょして辞退したため、アパートメントを手に入れることができたそうだ。確かにトラックが通ると部屋は揺れるが、ホームオーナーは「慣れるもんですよ」とのこと。
木の外装材で覆われた箱のような構造が、ガラスのファサードからドラマチックに飛び出している。ガラスファサードの内側は、片廊下型の共用廊下になっている。
《WoZoCo(オクラホマ)》 アムステルダム 1997年 アムステルダムのオスドルプ地区にある、高齢者のための100戸の集合住宅は、MVRDVにとって初の住宅プロジェクトだ。住宅に限らず、最初期のプロジェクトのひとつでもあり、若手のコンテンポラリー建築事務所としてMVRDVが注目を集めるきっかけとなった。1950年代からの地域マスタープランにより高さと面積に厳しい制限があるため、求められる100戸のうち87戸しか建物の四角いヴォリューム内に収まらないことが判明した。これに対してMVRDVの出した答えは、残りの13戸を建物の片側からカンティレバーで突き出すことだった。
このバーコード状の配置により、ほとんどの空間では2面から採光することになる(1面だけが外に面している小さなスペースもある)。こちらは、前側のヴォリュームにある仕事場。ダイレクトな日差しと、半透明のオレンジ色のパネルを通した光が入る。
こちらの「縞」には、階段と廊下が収容されているほか、ユニークなシマウマのランプもある。
この家は、地下でつながる2つのまとまったヴォリュームで構成されており、そのあいだには地下プールつきの小さな中庭がある。地域の都市計画規制により、「前の家」と「奥の家」に分割することが求められたのだが、これは住居と仕事場を分けるというオーナーの希望と合致するものだった。この写真を見ると、異なる機能に特化した空間がバーコードの縞のように並んでいるのがわかる。こちらはそれぞれ、ベッドルーム、階段、キッチン、リビングエリアとなっている。
家の反対側にまわると、趣きはかなり異なる。ソリッドな壁は透明なガラスに姿を変え、メインのリビングスペースが裏庭に向かって開かれている。
《バーコード・ハウス》 ミュンヘン 2005年 もうひとつ、1戸建て住宅からご紹介しよう。(本に書かれているように、MVRDVは「1世帯向け戸建て住宅は都市開発の最悪シナリオ」とみなしており、あまり手掛けていない。)クライアントは、家族とより多くの時間を過ごすため、経営していた業績良好な広告会社を2004年に売却したというカップル。
2人の子どもたちのベッドルームとプレイルームにつながるこちらのらせん階段には、中央にロープが下がった隙間がつくられており、子どもたちがロープで上り下りできるようになっている。
増築部分には、らせん階段からアクセスする。らせん階段はいずれもプレハブのユニットで、部屋の周囲を覆ってしまうまえに外から吊り上げて搬入し設置した。 階段と床が接していないことに注目。階段は上から吊られている状態で、床から1段分浮いているのだ。ディドゥン家の3階建ての建物は歴史的建造物として認定されているため、手を加えるのは最小限にとどめている。
ナチュラルな木の内装は、ブルーの外装とは対照的だが、1方向に少なくとも1つは開口部がつくられており、そこから外のブルーがのぞく。写真のいちばん大きいベッドルームでは、それぞれの開口部から広いテラスに出られるようになっている。
ブルーのテラスに浮かぶように、切妻屋根の付いた2つの立方体が配置され、この中に3つの部屋がある。プランターまで増築部分と同じ素材と色で仕上げられ、コミックブックに登場する建物のような印象をさらに強めている
《ディドゥン・ヴィレッジ》 オランダ、ロッテルダム 2006年 MVRDVが地元ロッテルダムで初めて手掛けたのは、ディドゥン家の小さな屋上増築プロジェクト。1階と2階が仕事場、3階が住まいという3階建ての家に暮らしていたギレーヌ・ファン・デ・カンプさんとシュールト・ディドゥンさんは、さらにベッドルームを3つ増やしたいと考えたのだ。 ブルーの増築部分はポリウレタン塗装で、階下や周囲に広がる歴史ある赤れんがの建物よりも、空と呼応しているように見える。
MVRDVは、インフラコストを下げ(外周の駐車スペース、舗装材の工夫などによる)、外装のディテールをシンプルにすることで、ひとつひとつがよりコンパクトでバラエティのある連棟住宅を実現している。実際的な制約とクリエイティビティのバランスをとりながら、親しみがありつつ新鮮な建築をつくるというMVRDVの能力が、このプロジェクトにはよく表れている。
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