ポーソン邸
こちらは、ロメロさんがレンダリングしたポーソン邸の側面。ライトは、この家をサンフランシスコ出身のポーソン姉妹のために設計している。アーティストのローズ、造園デザイナーのガートルードという二人姉妹は、ライトが顧問建築家として関わっていたアリゾナ州のビルトモアホテルで冬を過ごしていた。 砂漠にすっかり魅了された姉妹は、ホテルからそう遠くない、フェニックスの町と周囲の山々が見下ろせる丘の頂上の区画を購入した。 ライトがつくったのは、姉妹が冬を過ごすための2階建て3部屋の家で、使用人の部屋や、丘の斜面に隠されたようなカーポートも用意されていた。土地の石をとり混ぜてコンクリートで固めた石壁が風景になじむ。この「砂漠の石材」とレッドウッド材とでつくられた建物から、テラスやバルコニーが砂漠に向かって伸びる。建物の内と外の境界は、広い草地によってあいまいになっている。
数年前、スペインの建築家ダヴィド・ロメロさんは、3Dモデリングなどのコンピュータースキルをブラッシュアップしようと思い立った。マドリッドの大きなデザイン事務所で働くロメロさんは、長い1日の仕事から家に戻ると、2人の幼い子どもたちを寝かしつけてから部屋にこもって夜遅くまでパソコンと向き合い勉強する、という生活を続け、建築レンダリングやモデリングの最新技術を身につけていった。 その結果として生まれたのが、ウェブ上のポートフォリオ「Hooked on the Past」だ。いまのところ、フランク・ロイド・ライト設計のプロジェクトで取り壊されて久しいものが2件と、実現しなかったものが1件掲載されている。設計図や古い写真のほか、ライトに関するチャットルームで得たディテール情報をもとに、ロメロさんはインテリアや外観や立地環境を地道に細かく再現していった。まるで写真のようにリアルな画像で建物がいきいきとよみがえり、とくにライト生誕150周年となる今年、ロメロさんは世界中の建築マニアから注目を集めている。 Hooked on the Past 保存 メール ポーソン邸 「最初の試みとして、フランク・ロイド・ライトのプロジェクトを選ぶことにしました。色や素材や装飾の使い方が好きで、ライトはずっとあこがれの建築家の1人だったんです」と、セビリア大学で建築を学んだロメロさんは語る。 ロメロさんはライトのプロジェクトについてインターネットでリサーチを始め、目にとまったのがポーソン邸だった(こちらはロメロさんによる正面側のCG画像)。ライトが1939年に設計し、1943年に火災で焼失した家だ。 「ただ勉強のために、現存しない建物をモデリングしたかったんです」とロメロさんは言う。「手ごたえのある、面白いプロジェクトになると思いました」。
リビングルームのテラス風景。オリジナルの長いカーテンがしっかり描き込まれている。 竣工後、ポーソン姉妹はこの家でひと冬を過ごしただけで、次の冬には人に貸し出すことにした。突風により飛ばされたカーテンが暖炉に入って火がついたと考えられており、この家は全焼してしまう。 姉妹は家を建て直すことなく、この土地には塁壁だけが40年近くも残り、地元の人たちはこれを「シップロック」と呼んでいた。最終的には、この遺跡も道路拡張にともなって整地されてしまった。
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